メディカルスタイルFについての評価と解説

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メディカルスタイルFについてどう評価するのか、ご質問頂きました


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頂いたご質問(2017年7月、どうしようさま、30代・女性)

明治安田生命さんから、メディカルスタイルFという医療保険をすすめられているのですが、加入に迷っています。

5年ごと配当付組立総合保障保険メディカルスタイルF


・実額式入院
・日額式入院5000円
・がん200万
・上皮内がん30万
・重度疾病100万
・外来手術


という内容で5500円位だったかと。終身死亡保障はあるので、医療だけを検討中です。どう思われるか、ご意見伺いたいです。よろしくお願いします。



メディカルスタイルFは、そんなに評価に値するようなものではありません

保険という金融商品は何度見ても難解で、それ故に不安感に付け込まれて、つい契約してしまいがちな商品だと思います。今回、中身をチェックしてみた「5年ごと配当付組立総合保障保険メディカルスタイルF」は、特にそういった人たちの食いつきが良いかもしれません。

メディカルスタイルFの評価


貯蓄や資産運用の視点からでなく、純粋に経済合理的に考えて本当にお得なのか、そのような視点でメディカルスタイルFをチェックしてみたいと思います。



まず、メディカルスタイルFの特徴を再確認してみる


メディカルスタイル Fの特徴は、次の3つです。 複数の保証を特約として追加し、ライフスタイルに合わせて変更が可能な仕組みとなっています。

・複数の保障が組み合わせ可能
・重い病気にかかった時の療養費(治療+休養)をサポート
・保障内容を途中でメンテナンス可能


メディカルスタイルFの仕組み


付加できる特約は、本当に幅広いです。というか種類がありすぎて、一般人はどれを選んで良いか分からないでしょう。管理人も正直良く分かりません。分からないと、営業マンに聞くはずです。「皆さんはどんな特約を付けているのですか?」と。

こうなると保険契約の主導権は営業マンにわたりますから、思うがままです。複雑すぎる商品は思考が停止します。販売側の戦略でしょうか? 重大な病名を書けば書くほど、みんな不安感がどんどん募っていくという・笑。

病気・ケガへの備え・・・新・入院、終身入院、入院治療保障、外来時手術保障、 退院後通院治療保障、先進医療保障、特定損傷給付、傷害
重い病気への備え・・・がん保障、上皮内新生物保障、重度疾病継続保障、がん保険料払込免除
万一への備え・・・・終身保険
その他の備え・・・・保険料充当原資積立、リビング・ニーズ、重度がん保険金前払


次に皆さんが、最も気にする給付金についてです。1日〇〇円と固定の給付金を支給するものが多いのですが、メディカルスタイルFは自己負担額に応じて、支給される給付金が変わります。保障を追加するほどカバーできる領域が増え、給付金も増えるようです。


メディカルスタイルFの給付金


さらに、下記に示す重い病気になった際に、一時金が受け取れます。保障特約内容で変わりますが、一時金として1回300万円程度、受取れます。 こういう部分が本当に心配なら、掛け捨ての収入保障保険のほうが良いと思いますが・・・。


メディカルスタイルFの一時金


最後は、保障を自由に変更、追加できる点がメリットでしょうか。契約した後にも、契約内容を見直せるのは、確かにメリットがあるかと思いますね。

メディカルスタイルFの契約後の保障の変更



高額療養費制度で、かなりの負担額がカバーされるのだが・・・


さて、今まで見てきたメリットは、それはそれで魅力的ですよね。保険料が大してかからないのであれば。しかし、国の高額医療制度があるのに、どうしてわざわざ医療保険などを追加して、無理して保険に入るのか、常々不思議というか意味が分からないなと思ってしまいます。

参考リンク高額療養費制度について(厚生労働省)


もしかしたら、みなさん高額医療保険制度を知らないのでしょうか? 簡単に言うと、例えば普通のサラリーマンならば、100万円の医療費がかかったとしても、最終的に自己負担は8万7000円だけしか支払わなくても済む制度です。

下記のイメージ図がとても分かりやすいですね。世帯全体で合算が可能ですし、高額医療が過去12年で3回を超えた場合は、4回目からは自己負担額が更に減ります(支給額が増えます)。こんな凄い制度が有れば、世の中の医療保険なんてほとんど入る必要が無くなると思うのですが・・・。


高額療養費制度


この制度と年収の関係は、以下の表をご覧ください。上記の試算は、下記の「ウ」の位置の人です。世の中のほとんどの人はこのゾーンに入ると思います。

高額療養費制度とお金・費用


突き詰めると、医療保険で支払う月々の保険料と、実際に負担になった場合のお金の差額で、保険を使うべきかを考えれば良いと思います。

しかし、毎月の医療費が100万円になる事なんて、皆無に近いですよ。それに、最近は長期に入院などさせてもらえなくて速攻で退院させられます。病院が混雑していて、それどころではないからです。

身も蓋もない話ですが、もしもそのような長期入院を何度も繰り返すような病気にかかったら、ほとんどの人は入院の長期化を心配する以前に、とっとと死んでしまいます

と考えると、国がわざわざ用意している高額医療費制度は実に現実に即して良く出来た制度であり、わざわざ民間の保険などに入る必要が無いというのが原理原則になります。「あなた一体、何の心配をしているの??」と聞きたいくらいです。

8万円程度のお金が半年分かかったとしても、たかが50万円ですよね。こんなお金、普通の人ならば貯金から出すことができます。貯金というのは、こういう時のために貯めておくわけですから。

ただし高額医療保険制度では、患者の希望によってサービスを受ける「差額ベッド代」と「先進医療にかかる費用」等は、高額療養費の支給の対象とはされていません。よって、このあたりをカバーしたいのであれば、医療保険を活用するほか無いでしょう。

しかし、高度先進医療などの医療費は青天井です。実施できる病院も極めて限られて、田舎に住んでいたら病院に通う事は不可能かもしれません。そんな一部の超富裕層やセレブ芸能人の真似事をする意味があるとも、到底思えません。

先進医療費を実費で支払えないから保険を使うなどというのは、身の丈知らずの貧乏人の考える事だと言っても過言ではないでしょう。現実をよく見ろ、という事ですね。





沢山病気にかかるような超虚弱体質の人にのみ、経済的なメリットがあり


保険なんてものは、普通の人が「得」するようなものではありません


本当に、メディカルスタイルFに経済的なメリットがあるのか、メディカルスタイルFのシミュレーションで検討してみる事にしましょう。条件は以下の通り。

・契約年齢:30歳
・終身入院特約は終身型(65歳払込満了)



35年間、保険料を払い込み、医療保障を受ける形です。比較を簡単にするために、入院諸費用への保障(入院給付金)を、入院1日につき5000円で考えます。がんや重度疾病の特約については、過度の不安症の皆さんは「付加する」を選ぶと思いますが、敢えて「付加しない」にしました。

メディカルスタイルFの保険料シミュレーション


入院1日5000円の保障を終身で得るために、月に5084円の掛け金を支払います。35年間払い続けると、保険料の合計は約213万円となります。国の高額医療保険制度を利用して、メディカルスタイルFに加入しない場合の月額最大医療負担額は、超ざっくり8万円と仮定します。

ここで、住友生命のウェブサイトに掲載の情報を参考にします。平均入院日数は31日で、一日当たりの平均自己負担額は14036円必要になるらしいです。

入院1日あたりの自己負担平均額
住友生命保険相互会社.ウェブサイトより引用)


というか、なんでここに差額ベッド代の全国平均6155円が含まれているのでしょうか? これは、数字を大きく見せて一般人を不安に陥れるための、保険会社の悪巧みとしか言いようがありません。差額ベッド代を除去したら、1日7881円ですからね。本当に阿保らしいです。

家族の交通費だって、31日間、毎日1500円かけて病院までやってくるとしています。そんなこと、よほどの暇人でないとやりません。せいぜい500円とすると、合計で1日6800円くらいになります。となると、「ん?全労済や県民共済で全く十分じゃないか」と簡単に想像付きます。

・・・ま、それは置いといて、上記の数字を医療費の「自己負担分(青枠)」と、「それ以外」に分けて、1か月31日の合計金額を算出してみます。なぜなら、国の高額医療制度の対象は、「医療費の自己負担分」だけだからです。

項目 金額
医療費の自己負担分 5301円×31日=16万4331円
上記以外の費用 8735円×31日=27万0785円
合計 43万5116円


さて、ここからメディカルスタイルFに加入していた場合と、していない場合で考えてみます。まずは加入していない場合、実質的にどの程度負担するのかです。以下の通りとなります。

ケース 項目 金額
未加入の場合(高額医療制度のみ)   医療費の自己負担分 8万円
(高額医療制度によって自己負担額が減少)
上記以外の費用 27万785円
 合計 35万785円 


次にメディカルスタイルFに加入した場合。医療費の自己負担分で5301円かかっていたものが、1日5000円の支給が有りますから、ここが301円の負担で済む事になります。

ケース 項目 金額
加入の場合(高額医療制度+メディカルスタイルF) 医療費の自己負担分 301円×31日=9331円
上記以外の費用 27万785円
 合計 28万116円


ちなみに医療費以外の費用を27万785円としていますが、差額ベッド代とか家族の通院費とかを「適正」に考えると、実際の1か月の費用は4万8980円ですからね。

差額ベッド代を1か月丸々使って19万円も計上するのは、富裕層くらいですから、間違っても生命保険会社のいう事をまともに信じてはいけません。

以上より、1か月入院した場合にはメディカルスタイルFに加入していれば、約7万円お得になります。たった7万円のために、メディカルスタイルFの加入で213万円もの保険料がかかる訳で、これがお得と言えるんでしょうか??

という事は、

213万円÷7万円(1か月入院時の、メディカルスタイルFでお得になる分)=30.4回


となります。超概算ですが、一生のうち、1か月もの長期入院を30回以上も繰り返せば、メディカルスタイルFに加入して「本当にお得だ」という事になります。

これって、現実的と言えますか? 30回もの長期入院は、合計で930日もの病院生活ですよ。こんな事あり得ません。最初の3か月分だけで、とっくに死んでしまいそうです・笑。


がんや重大疾病の特約を付けた場合は?


ただし、がんや重大疾病の特約を付けていれば、一時金として300万円を受け取ることができます。特約を付けるには、保険料が3400円上乗せされて、シミュレーション上は追加で142万円の保険料を支払って、合計で約350万円の保険料となります。

これで入院日額が支払われて、一時金も300万円出るならば、入っていても無駄は無いと考える事もできます。制度上は、このように何度も受け取れますから、図を合計した1800万円を受け取ることもできるわけです。

特約の一時金


しかし実際には、次々にこんな重大な病気にかかるような人は、とっくのとうに死んでいるはずです。見た目では超絶にお得なような気はするかもしれませんが、こんな支払いをしていたら、皆さんが死ぬよりも早く、明治安田生命が死んで(倒産して)しまいます。保険料がパーになります。

そんな事は保険会社は絶対に避けますから、・・・という事は、ほとんどの人は一時金を1回受け取るか受け取らないか、そんな程度なのだろうという事です。仮に1回受け取るにしても、350万円を支払って300万円を貰うだけです。入院日額5000が2か月貰えても、330万くらい。

つまり、保険金を支払ったほうがお金がかかるじゃないですか! え? 一時金を2回受け取ればいいって?? 不健康になってお得なんて、不幸すぎます。1回でも2回でも、損得ぎりぎりのラインでしかないものなど、その程度だったら定期預金で貯蓄すれば良いだけでしょうね。

周りを見ても、癌にかかって心臓病にかかって脳卒中に同時並行的に次々に病気にかかる人など、まずいませんからね。一時金を3度も4度も貰うなど、あり得ない設定なのです。


メディカルスタイルFに入るかどうかの結論のような話


つまり、民間の保険なんてものは、最初から損することが分かっているゲームなのです。医療費をカバーできる国家の凄い制度があるにもかかわらず、不安に付け込まれてこんな多額の保険料を払い込むなどというのは、愚か者のする事だといえます。

保険は損


また、生命保険料控除なども使えるでしょうが、こんなのは年間4万円ですよね。こんな微々たる控除のために、明らかに損する多額の保険料を支払うのは、馬鹿馬鹿しさも極まれりですね。

普通の人であれば、高額医療費の利用と、あとは通常の預貯金で完全に「なんとかなる」世界です。当サイトでご紹介しているような、高金利の定期預金を最大限利用しましょう。

控除を使いたい場合は、生命保険料控除のような下らない利用ではなくて、個人型確定拠出年金のように、数十万円の控除枠があって、なおかつ将来に大きなリターンが期待できるような金融商品を使うべきですね。

医療保険を使うにしても、明治安田生命のメディカルスタイルFのような高額なものは不要であり、県民共済などの掛け捨ての安いもので十分です。当サイト管理人は、それさえも解約しようと思っています。解約を忘れていたので、ご質問頂いて思い出しました・笑。

なお、生命保険などは不要だと申し上げておりますが、自動車保険や火災保険などの損害保険は、必須です。ここは混同しないようにして下さいね。

また、シングルマザーだったり、若くして病気にかかる可能性の強い家計だったり、普通とは異なる状況の人であれば、検討する余地があると思いますので、その点もあわせてお知らせ申し上げます。

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